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松山市社協「ふれあい・いきいきサロンの実践報告」
 
ふれあいサロン小野 福地 民子氏
 

 松山市の東の端に位置する小野地区は総人口17,000人余りの農村地帯と四国がんセンターの建設が進む住宅地にあります。がんセンター建設に伴い日毎に様変わりする住宅地の中で、小野地区のお年寄り、子ども、障害のある人など、誰もが気軽に立ち寄り、楽しくくつろげる場が欲しいという声が高まっていました。

 そのような時、市社協よりご紹介いただき、一昨年研修旅行で、尾道の荒神堂サロンを見学にまいりました。そこは、商店街の空き店鋪が目立ち、その一角を借りて作ったサロンは、全てボランティアの人達でまかなわれ、今では地域の活性化に一役かっているところでした。ちょうど、小野地区にも、かつては近隣消費者の生活基盤を支えていた平井商店街があり、この商店街も周辺道路網の整備、大型店の進出などで空洞化がひどくなり、さびれる一方で、尾道商店街と合致するところがありました。この時より、小野地区でもサロンを立ち上げては、という気運が会員の中で高まってきました。

 ここで、少し、サロンを立ち上げるまでの道のりをお話しさせていただきます。

 まず最初に、平成16年度の小野地区社協の重点目標にサロン立ち上げを掲げました。しかし、いざ立ち上げるとなると資金面が0のところに、全然見通しのつかない事業のため、会員の中にも難色を示す人も多く、理解を得るのに時間がかかりました。しかし、できることからやってみようということになり、私達の条件に合った商店街の空き店鋪探しを始めました。幸い、商店街の役員さんからもご理解をいただき、昨年4月、第1回開設準備委員会を立ち上げました。ここでは、サロンについての様々な夢や構想を話し合い、この時から商店街の役員さん、市社協の本宮さんにも入っていただき、適切な助言をいただきながら、道をそれないように一歩一歩前進してまいりました。

 第2回目には、県が空き店鋪対策として、空き店鋪を利用して地域の人々のふれあいサロンをつくることにより、商店街の活性化を図ることを推進しているということを教えていただき、早速申請書を提出しました。この時も、今後の地域福祉を考える時、お年寄りのみならず、地域のコミュニケーションの場として、また、情報交換の場としても、身障者を含めた弱者、またその家族も集える楽しく明るいサロンが必要であるということで意見が一致しました。

 4月下旬、小野地区社協、協力会員の研修旅行で津島町のふれあいセンター「もやい」を見学に行き、地域の方々の支えが核になっている話を聞きました。小野地区でそれができるかどうか、資金源がアバウトでは無理なのではないかなど再び話し合いましたが、私達の気持ちは前進することで一致していることを確認しあい、この頃に、平井商店街の端に、元電気屋さんの空き店鋪が見つかりました。フロアが75坪、2つの部屋と事務所を入れると90坪余りあります。

 5月に入って、委員会のメンバーで視察、実測をして、車イストイレの必要性、畳のスペースが欲しいなど、構想を錬りました。その後すぐ、松山市の福祉部長さんを訪問、資金面について相談させていただきました。

 6月に趣意書、設計図、見積書をもって松山市に陳情、松山市としても努力する旨、お返事をいただきました。同時に松山市商工会にも平井商店街が働きかけ、空き店鋪対策でも助成金がもらえそうとの朗報をいただきました。

 8月には平井商店街の夜市にコーヒーサロンを出店、地域住民にふれあいサロンを分かってもらい、理解を得る努力をしました。

 9月に入り、邑都計画研究所の前田先生にお願いして、「ふれあいサロン」についてのワークショップをしました。この時は、各種協力団体の代表の方に参加いただき、住民意識の高揚を図るとともに、意見を出し合い、サロンに期待するものは何かを話し合い、先生のご指導を仰ぎました。

 2回目のワークショップでは、自分でできること、自分達でできること、頼まないとできないこと、どんなことができるか、どんなことをするのかなどを話し合い、その結果、サロンに、交流部門、活動部門、環境部門、事業部門、サロン部門の5つの部門を作ることを決め、部門会でそれぞれ何をするか話し合い、「小野サロンのめざすもの」を決めました。

誰もが気軽に立ち寄り、楽しくホッとくつろげる場づくりを目指します。
寂しいとき、不安なとき、話し相手が欲しいとき、寄り添ってくれる家族のような温かい雰囲気の場を目指します。
健康づくり、生きがいづくりの場を目指します。
特技を生かし、お互いに学び合い、世代交流のできる場を目指します。
広い心で出会いを喜べる、仲間づくりを目指します。

これは、現在も壁に掲げ、毎朝その日の当番の人が全員で唱和、お互いに確認しあって仕事についています。これはパンフレットにも入れてあります。

 4月から10月までに12、3回の準備委員会を持ち、11月、助成金が県共同募金から100万円、県市のやすらぎ事業として180万円が出ることが決定してから急ピッチで工事にとりかかり、280万円の助成金のうち、大部分の257万円は身障者のトイレ、スロープの改修工事にあて、中の備品は地域住民の寄付と、商店街の方々、協力会員さんの持ち込みで間に合わせました。

 その間、運営費の一部にと、商店街役員さんの指導もあり、喫茶コーナーをすることになり、ほとんどの協力会員さんはコーヒーのたて方を専門店に習いに行きました。荒れ果てた店鋪も協力会員の努力で、日に日にサロンらしく変身、12月6日準備期間中として仮オープンしました。

 12月22日、中村市長さん、武智福祉部長さん、県社協の亀本局長さん、市社協の大野常務理事さんをはじめ、市、県、地域よりご来賓の方々を迎え、盛大に開所式を行いました。とはいえ、資金が乏しい中での開所式でしたので、来賓挨拶の中で、市長さんに「電気がまばらでございますが」と訴える場面もあり、地域住民、特にお年寄りの方々は、真冬だというのに350名余りの参加者があり、サロンはあふれるくらいでした。

 小野地区では、ふれあいサロン小野とは別に、6つのサロンがあります。6つのサロンは地区の各分館を中心に活動し、このふれあいサロン小野は、地区の拠点として地区社協の事務局も入り、週5日制、土、日は休みとなっております。

 朝10時から4時まで、冬時間は3時まで、開いており、協力会員が午前、午後、各5人ずつのローテーションを組んで入っております。その日の当番は、その日の出来事を日誌で次へ伝達することになっております。

 また、このサロンは不特定多数の人がいつでも入ることができるのが大きな特長です。協力会員は、サロンを訪れた方々のお茶の接待、話し相手、手芸の手伝いなど、また、当番でない時は手芸の生徒になり、楽しむこともできます。先程申しました喫茶コーナーは、とても好評で、私達サロンの運営資金になりますので、いろいろなご意見を聞きながら、協力会員もがんばっており、また、励みの場にもなっています。

 また、地域の人々が自分の得意とする編み物、パッチワーク、囲碁、将棋、ちぎり絵、ストレッチ体操、歌の指導など、お互いに講師となって教え合う場となっており、講師の中には80歳を過ぎた方もあり、毎日来られて、編みぐるみのお人形を教えてくれています。また、ビデオ鑑賞もできるようになっております。
 日替わりメニューでなるべく多くの方が来てもらえるよう、曜日によって、 

月曜日 ストレッチ体操
火曜日 編みぐるみ、パッチワーク
水曜日 ちぎり絵
木曜日 コーラス、囲碁、将棋
金曜日 手芸(ブローチ、他)
 毎月第1土曜日は、お年寄りと子どもの「ふれあい広場」として、三世代の交流を図っております。今年度より子どもの居場所づくりとタイアップして「昔の遊び」を地域の方々の指導のもと行っております。子どももお年寄りも大喜びで毎回大盛況です。今日も午前中、紙鉄砲、竹とんぼなどをみんなでつくりました。60名ほどの参加となって、とても楽しい一時を過ごしました。相談窓口コーナーでは介護、子育て、健康問題など、民生委員が応じるようにし、作品展示では、みなが持ち寄った手芸、作品などを展示し、公民館の書道教室の作品も展示したりしています。

 協力会員や他の人達が自主的に得意とする作品を作って販売することもあり、支え募金のポストと共に運営資金の一部になっております。

 小野地区には二つの大きな老人施設があります。月に1、2回団体で訪ねてくれます。その時は、一緒に歌を歌ったり、話し合ったりして一時を過ごします。今日も何人か来られて、子どもたちと一緒に楽しそうに見ておられました。

 このようにサロンの体制は大分整ってきました。毎日平均35名前後の人が利用していますが、私達の考えている、家に寂しく引きこもっているお年寄りを、どのようにして誘うことができるかが、今後の課題です。毎月1日に愛媛新聞の「くらしのカレンダー」に1カ月の予定を掲載してもらい、地域住民に知らせることにしていますが、今だ周知徹底までにはいっていません。しかしこの頃は、このカレンダーを見て訪ねてくる人も増えてきました。今後は口コミを期待しています。ただ小野地区は住民の割に土地が広く、サロンに来る手段、特にお年寄りや身障者の方は、ネックになっています。幸いがんセンターが建設中ですので、平井商店街まで100円バスを走らせてもらえないものかと、今、伊予鉄と交渉中です。これが実現すると商店街の活性化にもつながるのではと期待しております。

 しかし、問題点もいくつかあります。一つに運営費が非常にかかるということです。松山市の方から助成金も大分いただけるようになりましたが、何しろ家賃が月10万円、光熱、電気、水道代等入れると費用が嵩みます。

 その上、周辺の交通事情にも悩まされます。サロンのあるところは非常に車の量が多く、気を許すことができません。サロンを訪れたお年寄りや子ども達が事故に合わないよう会員一同とても気を使っております。

 もう一つ、商店街とのタイアップによる意見の微妙な食い違いにも悩まされます。お互いに目的は同じでありながらも、福祉を中心に考える側と、空洞化対策を考える側とは、おのずと違いがあるのは当たり前ですが、今後も話し合いを密にしていく必要性を痛切に感じております。

 サロン立ち上げの際は、地区社協の評議員会も見通しがあるのかと、随分心配していただきましたが、他地区でもやっていることなので、「案ずるより生むが易し」の考えで進んでまいりました。今では、とても協力的で、サロンを訪ねて助言をしてくださる評議員さんもでき、とてもうれしく思っております。

 月に1回、各種団体の代表の方で運営委員会を開かせていただいておりますが、大分体制が整ってきましたので、4月からは2カ月に1回にしました。協力会員の声として、毎日は大変だが、過ぎてみると楽しい、皆のためにやっているという満足感があるなど、協力会員の生きがいの場にもなっており、やがてくる私達の高齢化の介護予防にもなり、お年寄りが小野地区に住んでよかったと思っていただけるサロンを目指して、今後もがんばっていきたいと思っております。これで私の発表を終わらせていただきます。ありがとうございました。

前田さんのコメント

 私もこの活動に少し関わっているので、点前味噌になるかもしれませんが、感想を含めて少しお話しさせていただきます。最近の活動をおうかがいしていなかったので、1日平均35名というのは、かなり多くの方が来られていて、地域に定着しておられるのが実感としてあります。「ふれあいサロン小野」の場合は、熱い思いがあって、それをあきらめずに、持ち続けることができたというのが、開設に至った原点なのかなと思います。そのエネルギーをいかに持ち続けるかというのが、こういう活動をしていく上で、非常に大事になりますので、コミュニティがうまく働いて、お互いを支え合って、サロン活動につながっていったのではと思います。

 それから、点前味噌ですが、自分でやれることがどういうことがあるかを整理して取り組んでいて、当面何を目標にして動いていけばいいのか、自分たちの活動の中から整理をされていると思います。それから、他の団体も一緒だと思いますが、商店街やいろんな団体と組んで、協働してやるということで、いろんな意味での難しさがありますが、思いは一緒だけれど、やり方が違うというようなことを乗り越えるパワーになるのが、先程の思いが共通ということと、地域の人たちに受け入れられているということだと思います。地域の人の受け入れ方という話で言うと、先程の得意技教室という、地域の人の能力をうまく発揮できるしくみを作って、そういう人たちの自分の持っているコミュニティが「ふれあいサロン小野」に来て、それらがつながってネットワークしていくという地域の広がり方の妙味がここにはあるかなと感じました。

 家賃10万円など、資金面では大変だと思いますが、今後、ビジネスモデルとして、夜市や喫茶店だけでは厳しいかもしれないので、先程の支え合い募金とか、地域の人たちが大事だと思ってくれて、それを支えてくれるようなしくみを地区社協を中心に広めていくということが大事かなと思いました。そのあたりを含めて、がんばってください。

   
 
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